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ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

ミニマリストはもうやめた

 断捨離ブームがきっかけで、ある時いかに自分が物に執着し、それがストレスになっているかに気づき、見渡すとあらゆる無駄なモノでごっちゃごちゃになっている部屋に居る事が嫌で嫌でしょうがなくなった。思い立ったが吉日、その日から徐々に自分の身の回りの物を整理し始めたのが2年くらい前の話。1年かけて、明らかに邪魔になっている不要なモノ達を捨て、持ち物を半分程に減らす事に成功した僕は、部屋が綺麗になった爽快感と物を捨てる時の快感に夢中になった。

 物を捨てるって最高!世界はこんなにも晴れやかで美しいのよ!さあ、みんなも物質文明に別れを告げましょう!そして資本主義に鉄槌を!ソウルを火の海に!なんて気持ちになった僕は、この考え方がもっともっと世の中に広まれば皆楽になるのにな、なんて思いながら広くなった部屋を眺めてにんまりした。

 

 そのうち、ミニマリストなんてものが流行りはじめ、ネットで先駆者が究極にスッキリとした部屋を晒し、ブログでミニマリストとしてのライフスタイルの素晴らしさを発信する姿を見て、僕はますます物を手放す事の魅力に惹かれた。さっそく僕もミニマリストになろうと、半分に減った持ち物を更に整理処分する事に決めたのが半年くらい前の事。いざゆかん、ミニマリズムの極みへ。

 そうと決まれば話は早い。残っていた漫画も売りさばき、服も2パターンだけを残して他は全部捨てるか売るかして処分した。漫画は全然お金にならなかったけど、古着は思った以上の金額がついて驚いた。ほかにも何となく捨てられなかった思い出の品なども、断捨離のテクニックを使って、写真に撮ってどんどん捨てていった。次第に部屋は格段に広くなり、持ち物は過去最小限にまとまった。しかし、最初に物を捨て始めた時のような快感というのはあまりなく、僕は物足りなさを感じた。で、昨日更に限界まで物を処分してやろうと、窓際に積んであった小中高の卒業アルバムを手に取ったんだけど、最後に一度見ておこうとパラパラめくった後で、急に捨てるのが怖くなってしまった。捨てるのに抵抗がある物はデジタル化して捨ててしまえばオッケー、なんて考えもあったのだけれど、もはや理屈じゃない何かが僕の中で邪魔をしている。

 

(おいおい、思い出の詰まったアルバムだろ?クソみたいな青春だったとはいえ、それすら捨てちまうのかよ?)

 

『何を言う!ミニマリストたるもの、こういった執着こそが最大の敵なのだ!クソだと自覚しているなら思い切って捨てたまえ!思い出ごと焼き払うのだ!』

 

 ジキルとハイドのように、アルバムを抱いたままぐるぐる考え込んだ僕は、そこで初めて、物を捨てることに虚しさを感じている事に気づいた。そしてアルバムすら捨てられるなら、部屋に捨てられない物はこれ以上何も残っていない、という事実に気づいてしまった。

 

僕は、突然恐ろしくなってしまった。今更、自分の物がなくなる事に不安を感じてしまったのだ。

 

 僕が今、手に持っているアルバムこそが物への執着の最後の砦であり、ここから先には僕の執着するような物はほぼ残ってはいない。それに気づいた瞬間、なんだか自分の正体がすっかり丸見えになってしまったような気がした。空っぽでちっぽけで、物質的価値に依存しつづけていた、”本当に何も持っていない自分”がそこにはっきり見えてしまった気がした。僕は、何かから逃げるようにそのままアルバムを閉じて、元の場所に戻した。そして、ミニマリストとしての究極を目指すのをやめることにした。

 物を捨ててストレスを減らす事は良い事だ、という思いに未だ変わりはない。物を無くすことも減ったし、いらないものを買わないからお金も貯まる。ただ僕には、ミニマリスト道のようなものを極めて、自分自身を物から完全に丸裸にするような覚悟はなかった。いや、少なくともその段階にはまだ至っていないようだった。言うほど大げさで難しい話じゃないのかもしれないけどね。

 これをきっかけに一旦冷静になった僕は、ミニマリストという型に固執して、価値観に縛られていたことのアホらしさにも気付いた。服を減らしすぎて生活上も不便を感じるようになってきたし、少なきゃ少ない程良しだなんて考え方では、物を捨てる事に囚われて、逆にストレスを貯めるなんて結果にもなりかねない。特に僕みたいに自分の無い人間は、この手の新しい価値観や概念に弱くて、とことん流されて極端な所まで行ってしまう癖があるから尚更だ。

 色々思考が行ったり来たりはしたけれど、僕はミニマリストという価値観や概念に囚われず、自分の心地いい範囲で物と上手に付き合っていければそれでいいや、と思えるようになった。自分には自分に合った物との向き合い方がある。今はそれに気づけただけでも良しとしよう。アルバムはまだ窓際に置いたままだ。

 

 

ミニマム(1) (ヤングマガジンコミックス)
ミニマム(1) (ヤングマガジンコミックス)