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ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

おしゃれすぎる服屋に行ったら、僕の住む世界とは違った。

 友達に、いわゆる洋服大好き服馬鹿が居る。昔からお洒落が大好きな奴で、センスが良くって、いつも格好良く服を着こなしている。そんな彼にどこで服を買っているのかを聞くと、聞いたこともない郊外の店を教えてくれた。先日、その店に連れて行ってもらったのだけれど、ドアを開けるとそこにはお洒落という名の見えないガスが充満していて、ガス耐性の低い僕には耐えがたい、大変辛い空間だった。

 

 僕だって少しはファッションに興味はある。しかし、人類にとって必要な酸素だって、過剰に摂取すれば酸素中毒になって死に至ると言うではないか。(範馬刃牙より)それと同じで、僕の体には早すぎる、高濃度かつ致死量のお洒落ガスが、店内に充ち満ちているではないか。

 

 コンクリートに白いペンキが塗られた内壁が、柔らかな間接照明に照らされている店内。まるで美術品のように、等間隔を空けて並べられる薄い色のカットソー達。どこの国の音楽かも分からない、スローテンポな曲が流れる中、初めて親父と一緒にサウナに入った小学生のように、呼吸の仕方すら分からなくなって挙動不審になっている僕。
今すぐ透明な存在になって消えてしまいたい気分の僕に、相手の目をしっかり見て話すタイプの明るい店員が近づいて来て、「是非、広げて見てくださいね。」と話しかけてきた。

 

 流れる冷や汗、しばし流れる沈黙。店員の怪訝そうな表情から察した僕は、おそるおそる目の前のそれを手にとって、親指と人差し指でそっとつまんで広げてみた。すると素人目に見ても確かに非常に品質が良いのが分かった。手触りが良く、指先でこれなら着衣した時にはさぞかし気持ち良いに違いないだろう。全身を巨大な耳かきの後ろのポワポワで優しく包まれるような、そんなうっとりする気持ちよさを味わえることだろう。「お値段もリーズナブルになっておりまして。」真っ白な歯の店員にそう言われて、ちらっと値札を見た。気になるお値段は8,000円だった。はっせんえん、8,000円!?こんなペラッペラの生地の肌着ごときに8,000円だと?あり得ない、あり得ない。どうやら僕は僕の知らぬ間に、自分の知っている世界とは全く違う世界線に入り込んでしまったようだ。8,000円の布で出来た身にまとう薄いもの、羽衣かこのやろう。大体8,000円あったら美味しんぼが何冊買えると思ってんだ?新品でも一冊750円くらいだったから10冊は買えるゾ。10冊どころかアマゾンマーケットプレイス見たら一巻が1円で売ってたから、このカットソー1枚で美味しんぼ一巻が8,000冊買えてしまうってんだ驚きだ!お主は8,000冊の美味しんぼ分の価値がこのカットソー1枚にあるというのか。8,000冊の美味しんぼ一巻を等間隔でこの店に並べてやろうか。とにかく僕は、この店の意識の高さに着いていけない、ハイソなファッションの良さが分からない。

 

 なぜか値札を見たまま固まったファッション貧困層に、健気にもしばらく輝くスマイルで話しかけていた店員は、ようやくこいつが客になる人間ではないと察したらしく、常連客である友達の方に移っていった。

 

 しばらくして友達が新作のコートを薦められ、試着をする事になった。もちろんその間僕は店員と二人きりだ。君と僕、二人だけの宇宙(店内)、二人は宇宙人ハンター・コズミックトラベラー。沈黙が流れるお洒落な空間で僕は、気まずさから逃れようと、腕を組んだり頭をかいたりしたが、最終的に思考の世界に現実逃避をする事で事なきを得る事になった。

 

ポワワワワーン(効果音)

((気まずいよぉ、なんで何もしゃべらないんだよぉ・・・ちくしょう、何でこんな思いをしなくちゃならないんだ。そもそも服のブランドって価格設定がおかしいだろ。例えば革製品なら分かる、分かるよぼく分かる。革の種類や生産地、ハンドメイドか既製品かによっても価値や価格に差が出る事にガッテンしていただけましたでしょうか?ガッテンガッテンできる。だけどカットソーが1枚で税込み1万近くの金がかかるってのは何なのだ?1万近くも取るからにはその価格に見合うだけの価値を持った貴重な素材を使っているとでも言うのか?中国の少数民族の村に代々伝わる、処女の生き血を吸う事でしか咲かないと言われる綿花。その綿花を育てる為だけに育てられ綿花畑に散った数百人の少女の命の上に成り立つあの綿花を使っているなら分かる、超分かるよ。でもこのカットソーにはあの綿はどう見たって使われてないだろ。生き血を吸い、紅い色が付く事から地元では红色棉(ホースィミェン)と呼ばれるあの綿を使っているならまだしも、どう見てもこれは淡い水色だし、そもそもそんなもん存在しねーし。))

 

 そんな風に洋服について本気出して考えすぎてユーラシア大陸の架空の村にまで飛んでいった僕の精神(こころ)が現実に戻るころには、気付けば友人の試着も終わり、ついでにそのままお買い上げと相成ったコートのお会計も終わり、その金額が20万円を軽く超えていたことから、僕の精神の失調は極限を迎え、アンドロメダの彼方にまで旅立つことになるのでした。

 そして三日三晩の間我を忘れて街という街を破壊し尽くした僕が廃墟で一人目を覚ました後に、友人に「そんな大金よくぽんと出せるもんだな」と言ったら、「俺プロミスしてるから大丈夫」とのセリフがVサインと一緒に帰ってきました。なーんだそれなら安心!やっぱお前はプロミスだぜ!

 

今日のまとめ:本人が納得してるなら、どんなお金の使い方をしたって自由!資本主義社会はキミの為にあるんだよっ!ご利用は計画的にね!

 

 

美味しんぼ 111 (ビッグコミックス)
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