ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

まだ積雪で消耗してるの?

 月曜の朝、またお仕事へ行く時間がやってきた。休日に夜更かしをする癖が昔から抜けなくて、土日で崩れた睡眠バランスのツケを未だに月曜日一括精算している。要するに眠くてチョベリバだ。外からざあざあと雨音が聞こえる。うーむ、音から判断するにかなり大降りみたいだ、今日はバスで行こう。いつものように眠たい目をこすりながらテレビを付けると、NHKで毒にも薬にもならない、ある意味朝ドラらしい朝ドラが流れていたのでザッピングしてニュース番組に変えた。

 

 ニュースでは昨夜関東で雪が降ったことに触れていて、一晩で積もった雪に東京が大混乱している様子を映していた。女性レポーターが、ご覧くださいと大声で叫びながら雪化粧をした渋谷かどこかに立っていたが、雪国育ち除雪機持ってる奴大体友達の僕には、一体何をご覧になるべきなのかがさっぱり分からない。毎年東京で雪が降る度にテレビで大騒ぎしてるけど、こいつらはいつになったら雪に飽きるんだろうか。朝から気分が急速に冷めていく。僕が人間でなく気体状の生き物だったら、テレビとの間に台風の目が発生すると思う。そんな僕をおいてけぼりにして、場面は電車の来ない駅で立ち往生している人達へのインタビューへ移り変わり、公共交通機関が麻痺していて、休校となる学校もあると深刻な調子でナレーションが入った。

 

 なるほど、交通機関が麻痺してるのね、それならこの混乱も仕方がないのかもしれない。きっと僕の感じる温度差は、思慮の足りない田舎もん特有の浅はかさから来るもので、超先進都市TOKYOの人たちは積雪によって社会に実害が出ることを恐れているからこそ、こんな大げさな報道の仕方になるんだろう。地下鉄もない地方に住む僕には、その想像がつかないから気持ちが冷めてしまう訳だ。やっぱ都会って大変なんだな、と思いながら歯を磨きにいった。

 

 歯をピカピカにしてテレビの前に戻ってくると、今度はレポーターが興奮した様子で雪だるまを作りだす様子や、5分も傘をささなかっただけでこんなに雪まみれになりました-!と、うっすら雪の積もったレポーターの頭をカメラがアップで映していた。な、なんだこれは、この映像は必要なのか。イライラする、めっちゃイライラする。何だこのイライラ。やっぱりこいつら雪が降ったことの珍しさに対して大騒ぎしてるだけなんじゃないのか。だがしかし、なんで僕がこんなイライラする必要があるんだ。あぁ、この気持ちは高校の頃、クラスのリア充達が意味の違ったネットスラングを使っているのを聞いた時のもどかしさに少し似ている。ひたすら顔を伏せて寝たふりをしながら、ああああああああああああああああああ!と心で叫んでいた時のあのもどかしさに似ている。君たちそれは違う、ワロタとは現在ないし過去完了形であり

 

「お前それワロタだな」

 

という使い方は通常しないんだと言いたかったあの気持ちに似ている。しかし、僕のような身分の低い卑しい民とスクール貴族であらせられる高貴な運動部の方々の間には日本海溝よりも深い溝があって、直接そのような親しい間柄のようなお言葉を、僕が貴族様と交わせるはずもございませんと疑似睡眠を続けた時のあの悔しさに似ている。うん似ている、確かに似ている。というかこれだ。

 

なるほど、分かった。

 

 僕は何だかんだいって、東京にキラキラした何かを、憧れという名の幻想を抱いているのだ。人も物も何でも揃っている東京が、空気が悪いだの人が多くて疲れるだのと言ってみるものの、やっぱり羨ましくて仕方ないのだ。だからいつもは地方の豪雪なんてよっぽど酷い時くらいしか報道しないのに、自分のことになると数センチの積雪でも大げさに報道する東京に、もっとアタシを見てと、思春期の女のように愛情にも怒りにも似た複雑な感情を抱くのだろう。この気持ちは、きっと恋心のようなもので、そこに理屈なんて存在しないんだ。コンプレックス?ソレチガウ!恋心だ!

 

 自分のホントウノキモチに気づいた僕は、大好きな人に想いを伝えられなくて、遠くから校庭で仲間達と楽しそうにしてるアイツを見つめる少女の目になった。この気持ちは届かないんだろうな。でもいいんだ、アイツが嬉しそうにしてる顔が一番好きなんだもん。

 

 寝間着姿でうっとりとニュースを眺めていると、ふと左上の時刻が気になった。よく見るといつもバスに乗る時間をとっくに過ぎている。終わった、田舎の公共交通機関は雪が降ろうが降るまいが一時間に2本しかないのだ、不便すぎる。その癖大雨が降ろうが豪雪が降ろうが皆平気で徒歩や自転車で来たりしやがるから天気のせいにして通勤できませんでした、などと泣き言は言ってられない。

 

 とにかく遅刻する訳にはいかないと、爺さん譲りの自転車に飛び乗りフルスロットル出勤をした。結果仕事場にはギリギリで間に合ったものの雨の中走ったんで全身びっしょびしょ、路肩に残った雪にタイヤがとられてすってんころりん手のひらずんどこべろんちょした。もう東京とか雪とかどうでもいいから、運転手付きのベンツが欲しい。