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ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

マラソンの魅力が分からない

 先に断っておくと、これは決してマラソンという競技やランナーへの非難や攻撃じゃない。主語を巨大にして無差別マシンガンをぶっ放して喜んじゃう程、僕は未熟ではないつもりだ。僕個人にとってその魅力が分からないでいる、というだけの話だ。

 

 先日僕の住む街でマラソン大会があった。全国からも沢山のランナーが集まって、地方紙やローカル局でもその特集だらけで、大いに盛り上がっていた。その日、ちょうど僕もコースの近くに行く用事があったので、生で見るマラソンってどんなもんだろうかと様子を見てきたんだけれど、老若男女入り混じり、みんなが一つのゴールに向かって必死に走っている様子は、感動的で素晴らしいはずなのに「どうしてこの人達はこんな苦しそうな事をしてるんだろう」としか思っていない自分が居た。僕は、そんな冷めている自分がなんとなく嫌で、ランナーに楽しそうに声援を送っている人たちの輪に入れそうにない僕自身について、改めて考えてみた。

 

 まず、何度考えてみても僕にとってマラソンとは、ただ長距離を走るだけの地獄のようなもの、というイメージしか出て来ないようだった。全世界でこれだけマラソンという競技が認知されており、プロアマ含め選手人口がとても多いというのは知っている。しかし、そのただ走るだけの競技になぜ皆は夢中になるのかが分からない。苦しみ以上の達成感があるのだろうか?大勢で走る連帯感の為?それともランナーズハイとかいうものの中毒になるのだろうか?そのどれもがありそうな気がするけど、僕にはあの苦しさに釣り合う程のものに思えない。

 

 次に、どうしてマラソンがそんな苦しいものだと思うのか探ってみた。ぼんやりと、用事を終わらせた帰り道に自転車をこぎながら考えていたら、一つのエピソードを思い出した。それは僕が小学生の頃の思い出だった。

 

 僕の小学校では、夏の1ヶ月程の期間中、全校生徒が昼休みに校庭でマラソンをするというイベントがあった。全校生徒には、校庭を周回した回数を記録する記録カードが配られていた。その記録カードには、線画のポケモンがいくつも描いてあって、先生からは、走った分だけポケモンに色を塗る事が出来ると説明された。当時大ブームだったポケモンを、さっそく児童教育にも取り入れた画期的アイデアだ。もちろんゲーフリに許可はとっていなかっただろうけど。

 

 子供達は、オーキド研究所で自分達のポケモンを選ぶように、先生、いや博士からヒトカゲゼニガメフシギダネの記録カードのうち一つを選ぶことが出来た。記録カードは横に10マス程。僕の場合ヒトカゲを選んだので、1列目~2列目はヒトカゲ、3列目~4列目はリザードそして5~6列目はリザードンへと、色を塗る事で自分のポケモンを進化させる事が出来るという仕組みになっていた。自分が走ればポケモンも育つ、校庭を50周もすれば自分のポケモンを最終進化系にする事が出来るのだ。子供ウケは最高、みんながこぞって昼休みに我先にと走りに行っていた。が、僕には有り体に言って地獄だった。

 

 当時の僕は、今より更にもやしっ子で、虚弱体質だった。学校のイベント毎に体調を崩し、風邪が流行る度に真っ先にうつされては病院に通っていたのを覚えている。もちろんポケモンは大好きだったが、それでハイになってウキウキ走り周るほど小学生ぼくの頭は浮かれていなかったし、すぐに疲れてくたばってしまう自身の弱さから、出来る事なら一ミリも走りたくなどなかった。

 

 そんな理由もあって僕はマラソンが嫌いだった。夏の炎天下に貴重な昼休みを消費させられ、マラソンを強制される事の理不尽さに怒り、大好きなポケモンを大人の浅知恵に利用されたという事にも憤っていた。正確には博士からポケモンの育成ノルマは決められておらず、決して強制ではないのだけれど、記録カードを見せ合い、自慢して、真のポケモンマスターを競う風潮がクラスの男子内で生まれていたのだ。それに伴い、まともに走らず、ポケモンを進化させないままの奴は、他のポケモントレーナー達の格好の餌食となり、もれなく迫害の憂き目に遭っては、強いトレーナーに給食のデザートを取り上げられて当然、という価値観の恐怖政治が始まっていた。なんとしてもいじめられ、冷凍パイナップルを奪われる事は回避したい僕。その為には、走るのが苦手な僕も、ヒトカゲと共に冒険に出掛けなければならなかったのだ。

 

 僕は走った、走り続けた。生真面目な性格なので、週回数に嘘をつき、ヒトカゲを裏技で進化させようとは思わなかった。まあ仮にそんな事をしても、男子同士の監視の目は厳しく、ルールに背くチート野朗は、走らないよりも酷いポケモンバトルを挑まれてしまうのだけど。だから僕は、生真面目に走り続けた。キリキリと痛む脇腹をおさえて、半泣きになりながらも大人を恨んで走った。そうやって毎日走り続けるうちに、ヒトカゲリザードに、リザードはついにリザードンになった。そして、なんとかいじめられる事もなくマラソン期間は終わり、がむしゃらに走りつづけた事で少し長距離走が得意になった僕と、涙と汗で色鉛筆が滲んだ僕のリザードンだけが残った。

 

 この過酷なポケモンマラソン大会は、小学校の在学中6年間ずっと続き、僕は順調に記録を伸ばしていったはずなのだけれど、ついにマラソンという競技、走る事の楽しさに目覚める事はなかったようで、ただいじめを回避する為だけに毎日死に物狂いで走った苦しい記憶しか浮かんでこなかった。ああ、今原因分かった。分かったわ原因。どう考えてもこれだ、これ、過去の過酷なポケモントレーニングと恐怖政治。どうやら僕にはマラソンにまつわる楽しい思い出が圧倒的に足りないようなのだ。あとポケモンを見るたびになんだか脇腹がキュッと痛むのもきっとこのせいだ。誰か、誰か僕にマラソンの本当の楽しさを教えて下さい。僕からの、それと6年間でムキムキに育ったリザードンからのお願いです。

 

 

ポケモンプラモコレクション 29 リザードン進化セット (ポケットモンスター)
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