ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

新品のエアポッズプロをドブに落とした話

 こないだエアポッズプロをドブに落としました。
 買ってから3週間、通勤中に今日も最先端のノイズキャンセリング機能に酔いしれようと、ケースからつまみ出そうとしたその時でした。
 左耳のイヤホンが、ぽろり手から落ちたんです。それを、目で追いました。2度地面をバウンドした後で、イヤホンは側溝の蓋に開いた穴に吸い込まれていったんです。
 突然ですが皆さん、神を信じますか? 僕はこの瞬間から信じています。
 なぜなら落ちた側溝の穴というのが、もしかするとワンチャン取れるかもしれないという希望を持たせるに足る、ちょうど握り拳大の大きさの穴だったからです。しかも太陽光がその握り拳大の穴に斜めに差し込んで、まるでスポットライトのように水面に沈むエアポッズプロ(左耳)を照らしているではありませんか。こんな奇跡的な光景、神の啓示以外のなにものでもないです(断言)
 エアポッズプロは生活防水機能を持っている、という前情報も、後に聖人認定されるであろう僕に諦めることを許しませんでした。それはあまりにも残酷な希望でした。
 結果、僕は希望にすがりつき、苦痛に顔を歪めながら会社に連絡して有休を使いました。鬼気迫る口調を察してくれたのか、特に理由は聞かれませんし、聞かせません。
 さて、まずは恥も外聞もかなぐり捨てて、地面に這いつくばり拳大の穴に片手を差し込みます。右肘あたりまで穴には入ったものの、そこから先には進めません。クソが。
 ここで諦めてなるものか、と自宅に走って帰り手に取ったのはアレ、BBQとかで炭をはさんだり暇なとき無意味にカチカチして遊ぶやつ。そう、火ばさみ。
 大慌てで火ばさみを手に持ち、僕のあまりの慌てっぷりに目を覚ました妻も連れて運命のドブ穴に再び向かいます。
 まず日の光が差し込む位置を確認し、火ばさみを穴に入れます。腕によって視覚情報が塞がれるため、第六感を研ぎ澄ませて運命力に身を委ねてゆっくりと・・・・・・はさみます。
 カチリ。取れた!
 興奮と共に引き上げると、そうそう!エアポッズプロと同じ大きさの小石!クソが! 怒りのままに小石を口に放り込んでかみ砕いて奥歯2本破壊したというのは嘘で、僕はマジでじわりとあふれ出る涙をギリ押しとどめることしか出来ませんでした。だって女の子だもんなんて世間じゃ言われますが、実は男の子の方が逆境に弱いというのは常識です。
「あの、大丈夫ですか?」
 しばらく膝をついて黙っていると、声をかけてきてくれた人物が現れました。彼は運命のドブ穴の斜め向かいにある飲食店の従業員さんでした。手にはスマホを持って、少し青ざめた様子です。聞けば地面に倒れている男が居るので様子を見てこい(そして救急車を呼べ)と言われてきたそうです。
「・・・・・・ドブ穴にエアポッズプロを落としたんです」
 端的に伝えると、ほっとした表情と気の毒そうな表情を、ちょうど美味しいカフェオレの比率で顔に浮かべて帰っていきました。心配かけてごめんね。
「アノ、大丈夫デスカ」
 次に現れたのは、ミニベロ自転車に乗った金髪メガネで筋骨隆々の外国人の方でした。

 何この展開、童話の4ページ目かな?
 通りすがりのハルクに事情を話すと、「OK」と一言。側溝にはまった分厚い石蓋ごと持ち上げようとするではありませんか。
 この石蓋、恐らくは設置されてから一度も開けられたことはないのでしょう。繋ぎ目は苔むしており、常人には手も足も出せないことが見てとれます。しかし、このアングロサクソンの筋肉量ならもしかすると・・・・・・駄目でした。
「ゴメンネ」
 と、心底申し訳なさそうにするハルク。申し訳ないのはこっちの方です。マジで。
 その後、火ばさみ片手に一肌脱いでくれた妻の努力も空しく、カチカチと空と小石を掴む火バサミの音だけが響き、時は経ち、

 今でも僕のエアポッズプロは、ドブ穴に差し込む一筋の光の向こうでまるで眠っているかのような安らかな姿で横たわっています。アーメン。
 ちなみに片耳だけ買い直したら2万5千円したので、それ以降エアポッズプロは完全室内専用になりました。僕の住んでいるマンションの自室は、建築時の欠陥工事か、壁の中にビーバーの家族が暮らしているせいなのか知りませんが、まるで体感道路脇2メートルで暮らしているかのような超騒音物件なので、エアポッズプロのノイズキャンセリング機能は日々その真価を十二分に発揮してくれています。マッキントッシュの製品は本当に素晴らしいですね。

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お分かりいただけただろうか


 おい、お前ら、エアポッズプロ買え!!<PR記事>