ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

カフェインに頼り切ってる話

 僕たち社会決闘場で戦う労働戦士は、時にポーションのようにブラックコーヒーを飲む。カフェイン耐性薄めの僕も、年々落ちていく体力を補うべく、黒ポーションを経口補給(経口でない人への配慮)している毎日だ。カフェインにより過活動が可能となって目の下のクマが濃くなればなる程、より強く熟成された労働戦士となると言われている。

 話は変わるけど3月も半ばになっても北陸はまだ寒い。なんと今朝も飛ぶ鳥がそのままの姿勢で凍って落ちていたというは僕の過剰なサービス精神による嘘。本当はユニクロのライトダウンが必要なくらいには寒い。

 まあとにかく寒いので、社内の自販機でボトル缶タイプのコーヒーを買って一口飲み、低血圧のために一層冷えた身体を温めようと、そのコーヒーを首元に。ついでにお腹に当てた。

 ああ暖かい。

 そして湿っぽい。

 すぐに僕は一口だけコーヒーを飲んだことを後悔した。

 寝ぼけた頭のせいか、日々剣を握り戦うせいで疲れ果て握力がなくなっているせいか、ボトル缶の蓋がしっかり閉まっていなかったのだ。コーヒーをこぼすなんて話はよく聞くけれど、背中と腹に黒い染みを付けている奴は見たことがない。

 ため息も出ず、意外なことに悲しみも怒りもなかった。ただ起きたことに対する空しさだけがあった。

 猿田彦珈琲監修のコーヒー臭をぷんぷん漂わせながら会議に出席した僕は、背中とお腹に堂々たる黒染みを付けたまま何も起きていないような顔で仕事を続けた。

 プロのマジシャンで、おどおどした人がいるだろうか、いやいない。彼らは注目させたい箇所に人々の視線と注意を惹きつけるため、まるで種も仕掛けもハナから考えてございません、という表情と姿勢を観客に見せるのだ。

 だから僕もそれに従った。カフェインを摂ったことなどございません、手に持っているこれは黒いミルミルです。シャツに付いた黒い染みも臭いも生まれつきの個性、それを認めない社会の方がおかしいんですよ。と。

 実際には、一目瞭然だって。そんなことは分かっている。だからと言って、僕に何が出来るというのか。タコピーが何とかしてくれるというのか。時間は流れ、暖房で揮発したコーヒーの臭いが会議室に満ちていく。

 2口目の黒ミルミルを飲みながら、僕は平然とした顔で議事録を打つ。

 頑張れ、僕。働け、僕。帰って洗濯機にシャツをぶち込んでから泣けばいい。