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ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

トイレでスマホがスカラベになった話

 先に断っておくと、またトイレの話だ。今日、会社のトイレでズボンを下ろした僕は、洋式トイレに座りながらスマホを少しさわっていた。簡単なメールチェックをして用をたした後、おしりを拭く為に僕は一旦スマホをどこかにしまおうとした。しかし、あいにくポケットにいれるにもズボンは既に下ろされており、その収納は困難と思われた。ふと辺りを見回すも、置き場所になりそうな棚や台もない。万事休す、このままではおしりを拭けないではないか。

 

 しかし僕は、こんなことで焦りはしない。あくまでスマートに、下ろしたパンツの上にスマホをそっと置いて、ウォシュレットは使わずエレガントに拭いた。この技は、安定した置き場所がない場合のみ使用を解除されるいわゆる奥義であり、パンツの上に置くことは、スマホにとって決して最善ではないが、スマホをそのまま地面に置いたり、片手で持ったまま不安定にことを進めるよりは、落下や汚染のリスクを最も抑えることのできる技である、と今は亡き師匠に教わっていた。

 

 奥義を使い、スマートに全てを終えた僕はスマートにズボンを上げた。すると、肝心のスマホを取り忘れており、パンツの上のスマホはツツーッっとズボンを下り、靴下の間に挟まってしまった。「しまった!」と冷や汗が流れる。ここまでスマートに事を済ませてきたのに、なんたる凡ミス。ここからもう一度ズボンを下ろし、スマホをズボンから取り出す様は全くスマートではない。それは僕の美意識に反する。

 

 何とかして、この失敗を取り戻さなければならない。そう思った僕は、あくまでエレガントに、ズボンと靴下の下で膨らむシルエットを頼りに、スマホを布越しに捕らえた。パンツからズボンを伝って落下したスマホが靴下の裾に挟まっているのであれば、一度スマホを上にずらしてやれば、靴下の呪縛から逃れたスマホが、ズボンの裾からスマートにポンッ!と飛び出てくるという寸法である。イッツパーフェクトプラン。

 

 捕らえた輪郭をゆっくりと指でなぞると、4.7インチのファーウェイp8liteの輪郭が確かにそこにあった。僕はニヤリと微笑むと、一気にそれを上にずらしてやった。するとツツーッっとスマホの感触が靴下から離れたのが分かった。成功だ、後はズボンの裾に手を置いて、落下してくるスマホをお迎えするのみとなった。僕は布越しに勝利を確信し、手を離した。

 

 しかし、あろうことかスマホの感触は手を離したふとももの辺りで止まったままなのである。おかしい、何かが狂っている。想定外の状況への焦りから、ブワッと尋常でない量の汗が出た。なんとか冷静に状況を判断しようとする。地面に対して真っ直ぐ立っている以上、ふとももでスマホが止まるということは本来あり得ないはずだ。すると、重力に逆らう何かの要因があるとしか考えられない。一体それは何だ!?

 

 そこでふと、記憶が今朝の出勤前にさかのぼった。今朝はとても冷え込んでいて、寒さで目が覚めたほどだった。そこで僕は、震えながら先日ユニクロで購入した、ヒートテックタイツを履いてからスーツに着替えたのだった。

 

 ヒートテック!そう、ズボンと靴下の間には、ヒートテックタイツが存在していた。そのなめらかな肌触りは、僕に装着を忘れさせる程で、事実僕はズボンを下ろした際確かに一緒に下ろしたであろうタイツの存在を認識することすら出来なかったのである。恐るべきユニクロの科学力。原因は分かったが、状況は既に詰んでいる。もはやタイツの下にあるスマホを取り出すには、ズボンを脱ぐしかないのだ。

 

 僕は泣いた、己の無力さと不格好さに声を殺して泣いた。ズボンを脱ぎ、タイツの布ごしにくっきりと形が表れているスマホのシルエットに、僕はハムナプトラに出てくる、皮膚の下を移動するスカラベを思い出していた。