ロッキン神経痛のブログ

脳みそから出るアレをこぼさずジップロック

自分の小説が出版される話

 
 とんとん拍子なんて言葉があるけれど、それ以外に言葉が見つからないくらいにとんとん拍子に事が運んで、この度カクヨムに書きなぐっていた「限界集落・オブ・ザ・デッド」が書籍化する事が決まった。マジで?どうやらマジらしい。
 
 第一報を受けた僕は、胸の内で初めて沸き起こる感情をどう処理すべきか分からなくてとりあえずノートを開いて「小説!?」とだけ大きく書いてみた。それで、どうやら自分の小説が世に出るらしいという事が分かった。自分の小説が世に出る?マジで?どうやらマジらしい。
 
 後は丸窓を開けながら太陽に向かって歌を歌い、口笛を吹きながら陽気に街に繰り出すと道沿いの花屋やパン屋から顔馴染みの店員達が駆け寄ってきて、僕のウインクによって虜にしたまばたきの多い美女に囲まれつつ祝福を受けながら一緒に踊り歩き、最終的に噴水のある円形の広場でみんな両手を挙げて、小鳥たちが花のブーケを僕の頭にのっけて、いつの間にかコーラスと楽団まで集合して曲はアップテンポになり、花吹雪と共に大団円を迎えた後、屈強な街の男数人に持ち上げられた僕は高いところで一言「こんなの夢みたい」って手を顔の前に組みながら呟いてチャプター1が終わるんだろうけど、何しろほとんど外に出ない上に顔馴染みの店なんてないから室内で感動を表すしかなさそうだ。
 
 ゆえに僕は、貧困な想像力を駆使してズダダンズダダンと不器用なスキップをしながら台所の棚からマルちゃん正麺を取り出した。
 
 お湯を沸かして注いでタイマーをセット。既に夕飯は済んで久しい。つまりこれは夜食のマルちゃん正麺。夜のマルちゃんだ。
 
 仕上げに生卵を入れて刻んだネギを乗っけてごま油まで垂らしてみる。一体、これ以上の贅沢がこの世にあるだろうかいやない。
 
 胃の中のマルちゃん正麺は次の日には胃もたれだけを残して跡形もなく消えてしまったけれど、書籍化の話はどうやらまだ消えてないようなので、勢いとノリに頼って今後も頑張っていきたいと思う。
 僕の脳みその結晶が世に出た時には、皆様よろしくお願いいたします。
 
 

VRでエロ動画を見た話

 久しぶりの更新だ。仮病から始まった不登校がいつの間にか一学期を終えてしまうように何となく更新が止まったブログも誰にも読まれていないというのに謎のプレッシャーが重力加速度的に上昇して記事を書けなくなってしまうのはよくあること。

 

 そう、よくある事だからこそ突如思い出したかのようにカジュアルに更新をしたっていいのだ。そう自分に言い聞かせつつ今日も駄文を書いていこうと思う。

 

 そう、僕は先日大阪に出張をしたのだ。仕事は一日と半分の時間であっという間に終わり、同僚を駅で見送った僕はしばしの間考えて土日の時間を一人旅に充てる事にした。

 

 早速じゃらん楽天トラベルを駆使して前々から泊まってみたかったカプセルホテルを予約する。実は今回の旅の目玉はこれが主の目的と言って良かった。田舎には土地が有り余っている為、カプセルホテルのような合理的かつ未来SF的な夢ある宿泊施設は無いのだ。何を隠そう僕は、前々から人口過密都市に住む都会人達が生んだ奇抜なワンアイデアをそのまま形にしてみたらめっちゃ流行って大成功しちゃったよホテルに泊まってみたかったのだった。

 

 話を進めよう。僕は心斎橋にあるカプセルホテルに泊まった。それは所謂健康ランドにカプセルホテルが付随しているような施設だった。靴箱の鍵をフロントの女性に預け、ロッカーの鍵を渡される。ちなみにカプセルホテルは法律上簡易宿泊所とされている為部屋に鍵の類は存在しない。ではなぜ僕に鍵が手渡されたのかというとそう、実は僕は予約の直前に日和ってしまい、奴隷船よろしく縦横並びのコールドスリープ装置のようにカプセルが並ぶあの狭い狭い個室に泊まる事をやめてしまい優雅に広い半個室空間にカプセルが設置され荷物用のロッカーまで付いているという、いわばカプセルホテル界の豪華客室に泊まることにしてしまったのだ。歳は取りたくないものだ。身体の疲れに正直になってしまう。好奇心に手足が生えてそのまま市中を練り歩く好奇心お化けのこの僕が、日和ってしまったのだ。ぴよぴよと。

 

 つまり、僕が右手にはめているこのピンク色の鍵は、僕がこのグランドサウナ心斎橋における特権階級である事を他の施設利用者に示しているのだった。以後、他の一般利用者から僕が向けられた羨望と嫉妬の眼差しと、身に余る権力を手にした僕とが繰り広げた凄惨かつ歴史に類を見ない事件については、大阪府警の厳しい指導を受けた為、ここで記すのはやめておこうと思う。さて一泊した僕は経年劣化によって濃いクリーム色になったカプセルホテルの内部の素晴らしい構造美を堪能した。機能しなくなって久しくなったいくつかのボタンをうっとり眺めて海外諸国ではあり得ないだろう最新の薄型テレビが設置されているサービス精神に感涙した。そして付随するリモコンでテレビの電源を付けると、なんと、絶妙な色気を持った醜女が満員電車の中であられも無い姿にされているAVが流れはじめたのだった。馬鹿な。なぜ。どうして。僕はそのAVのシチュエーションにゴクリと息を飲む……ことはなかった。僕の住む田舎には地下鉄がない。電車はあるが、乗車率は10%そこそこで皆が座れる優しい世界がそこに広がっている。つまり痴漢電車系AVに対する憧れの種のようなものは、田舎者である僕には全く無いのだ。苛烈な通勤戦争を経験し続けるあまり、脳のシナプスが破壊され、やり場の無い怒りが豊かな想像力と共に性欲に変換される都会の男達に少しの嫉妬を覚える。それにしても何故AVが流れているのだ?僕は一切視聴カードを購入した覚えはないぞなもし、と部屋の隅に眼をやるとそこには一つのパンフレットが目に映った。手にとって見るとなんとこのグランドサウナ心斎橋では全個室に無料でアダルトチャンネルが放送されているのだというではないか。なるほど、神は存在していた。タバコの焦げ跡の残るカーペットと死んだ目をしたオッサン達が集うこの場所は、現代日本に顕現した小さなエロサレムだったのである。童心を忘れない僕は興奮を精一杯表現するように、二つあるアダルトチャンネルを数秒ごとにいったりきたりしては、鼻息も荒く画面に見入っていた。目頭を激しく切開したAV女優を僕は見つめ続けた。主よ、ブドウ酒とパンと無料AVに感謝します。ハレルヤ。

 

 話を本題に進めよう。僕はその翌日グランドサウナ心斎橋のグランドなサウナを堪能した。それは、宿泊費 税込4,200円以上の素晴らしい体験だった。野外露天にジェットバス、打たせ湯まで完備したそこは、古代ローマの浴場にも引けをとらないこの世の楽園だった。湯上がりに小さなタオルを使って身体中の水気を拭き取り、無料のドライヤーで無料で髪を乾かして感無量。そしてエレベータを使って四階の豪華客室に向かう途中、壁に貼られたポスターに僕は目を奪われた。

 

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 VRアダルト。

 

 VRとアダルト、この二語以上に夢のある組み合わせを僕は生まれてこの方聞いた事がなかった。前々より気になってはいたものの、VR環境の導入費用の高さから見送っていた未知かつ究極の体験となるだろうその二言の組み合わせが、なんと、30分たった500円で体験出来るのだという。これは試すより他ないではないか。他ないではないか。

 

 脳裏に閃光走り、エレベータのボタンを高橋名人ばりに連打して、1階へ。僕は血走った目といきり立った自身のVR棒を誇示しつつフロントへと向かう。片言の女性従業員に向かって指を立て、勢いよく一言。言ってやった。

 

「あのぅ……その……VRの……へへっ……500円のやつ……。」

 

 ぽかんとした顔をしたキムさんは、チョト待っててと一言、バックヤードへ。てきぱきとカゴを持って帰ってきた。手慣れたものである。中にはVRヘッドセットとギャラクシーエッジ。なるほど、これをこう組み合わせて、ああするのだな。僕は頷いた。

 

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 大きなカゴを持って、ウキウキとした気分でエレベータに乗り込む。同乗したオッサン二名が、横目でこちらをチラチラと見てくるのに気付いた。僕の横には例のポスターが貼ってある。交互にそれを見ているだろうオッサン達。ははん、こやつ今からお部屋に戻っておしこりに遊ばされるのか。と思われているのだろう。VRヘッドセットを身に着けたそれは、さぞマヌケな格好なんでしょうなという侮蔑の表情を浮かべているように見えた。脳の進化の追いつかない馬鹿共め。そうだ、おしこり遊ぶのだ!

 

 強気な心の声とは裏腹に、額には恥ずかしさの汗が滲んだ。しかし、僕はどんな逆境や困難にも耐えて見せよう。人類はそうやって勇気と共に進歩してきたのだから。オタク特有の歩幅の狭い駆け足(俊足)(ライバルに差を付けろ)で半個室に入るなりカーテンを勢いよく閉める。ドタバタと音を立てたものだから、向かい側の部屋から流ちょうな発音でSHIT!と聞こえてきた。どうやら金のない外国人が泊まっているらしい。もしくは嫉妬と言ったのかもしれない。勿論最新技術を体験する僕に対するものだろう。

 

 そしてヘッドマウントディスプレイ装着から動画の再生までは、これまでの人生におけるどんな場面よりもスムーズに行われた。まるで生まれる前から操作法を知っていたかのような感動的な体験だった。デジャブとでもいうのだろうか。数十回繰り返したような手慣れた手つきで未体験ゾーンへと突入した僕は、今日この日の為に生まれてきた事を確信した。気づけば僕は、見知らぬ明るい部屋の真ん中で座っていた。目の前には、見目麗しい女性が二人……二人とも僕を「お兄ちゃん」と呼んでくる事から、どうやら生き別れた妹達であるらしい事が分かった。さっきまで僕は、出張してカプセルホテルに泊まる夢を見ていたらしい。やっと現実に帰ってきた僕は、妹達にされるがまま、服をたくし上げられて……

 

「うわ、肌と乳首黒っ!」

 

 そこでこの世界がどこまでも仮想現実、VRの中である事を思い知らされた。

 

 自分の服の下、そこに現れたのは、色の白く少したるみ始めた僕の身体ではなく、日サロでこんがり焼けて、バキバキに腹筋の割れた僕の、いや男優の身体だったのである。こんなお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃない。そんな僕の声も無視して、二人の妹はバーチャル俺ブラック乳首を両側から攻め、バーチャル俺VR棒をアレコレしてくるのだった。もはやこれでは作業どころではない。存在しない妹を手でどけようと両手をばたつかせる僕。違う、これは僕じゃない。畜生、僕の身体をどこへやったんだ。どけ、お前達は僕の妹じゃない!同時にヘッドホンの向こうからシットファックの幻聴を遠くに聞きつつ、暴れた僕。だが僕はやがて抵抗をやめた。どれだけ拒否しようと、これが僕の新しい身体なのだ。500円はもう返っては来ない。30分を楽しみ尽くすには事実を受け入れるしかない。しかし、この心は思うままにはさせないぞと。僕は両腕を組み直し、僕は、僕は全てを見届ける事にした。非暴力非服従、平成のガンジーがここに座っていた。

 

 まず左の妹が、顔を近づけてきたので、こっこれは……キッスでござるかヌホホ!と興奮する僕。次の瞬間世界は唇に包まれた。巨大な顔と唇が僕の視界いっぱいに広がるその光景はまさに進撃の巨人。捕食されるという恐怖で一杯で、VRという鳥籠に捕らわれていた屈辱を思い出す始末。思わずヒエッと声が出て愚息もしょんぼり。すかさず右の妹が、バーチャル俺ブラック右乳首を舐め出したので、その可愛い顔を拝見しようと思った所、全天球カメラの死角に入ったのか、右妹の顔面が縦に分裂して四つの目が僕をぎょろりと睨み付ける。

 

「ヒョエエエエエ!!」

 

「SHIIIIT!!!」

 

 息も荒く、悪夢から目覚めるようにヘッドセットを外した僕は、30分を知らせるアラームを止めてカウンターに籠を返しにいった。ふわふわとした現実感のない地面を踏みしめ、何度も顔を振りながら僕はこの世界へと帰ってきたのだ。VRとアダルト、そこには現実を忘れさせかねない無限の可能性と共に、技術の追いついていないエロの荒野が広がっていた。しかし、きっと5年10年後、そこには開拓者によって広げられた見渡す限りのアダルト田園風景が広がり、バーチャルリアリティの世界で至福を享受する男達の姿が広がっていることだろうと僕は確信する。現時点でもアラはあれど、紛れもない現実感がそこにはあるのだ。少しの恐怖感と未来への大きな希望を胸に僕はカプセルホテルを後にした。この後旅先で調子に乗って暴飲暴食を繰り返し、翌日人生最悪の二日酔いと共に早朝早くに帰路に着いたのは別の話だ。火が着くようなアルコール度数のお酒は飲まない方が旅は楽しめる。それだけを伝えて今日は筆を置こうと思う。以上だ。

スーパーひ〇しくんVS完全体フ〇―ザ

何らかの何かの記録です。

 

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スーパーひ〇しくんVS完全体フ〇―ザ

「私と互角に戦える生物がこの世界にいるとは、ふしぎ発見です」

 ~クイズ番組の司会者が、宇宙最強の帝王と戦うお話です。~

 

怒り爆発!ひ〇しよ、みんなの仇を討ってくれ~~

ペケポンペケポンッ

テーレレッ テーテテテテテテーン(効果音)

ナレーション【怒り爆発!ひ〇しよ、みんなの仇を討ってくれ~~】

 

 

「オーホッホッホ!初めてですよ、私がこの姿を他人にお見せするのは」

 

甲高いダミ声が、テレビスタジオの中に響く。このスタジオでクイズ番組の司会をして、もう30年にもなるベテラン司会者の草壁《くさかべ》ひろしは、こちらを勝ち誇ったように見下げるその得体のしれない生き物を睨みながら、自身の額から流れる血を拭った。これまで、世界中の変わった動物たちを何百とレポーター《ミステリアスハンター》と共に紹介してきた草壁も、このように二足歩行で人語を話す生物はついぞ見たことはなかった。

 

「私と互角に戦える生物がこの世界にいるとは、ふしぎ発見です」

 

草壁がそう強気に返すと、その生物はそれをあざ笑うかのように、オーッホッホともう一度高笑いをする。スタジオの壁には、直径3メートルもの大穴が開いており、そこから外の景色が覗いていた。このスタジオでの撮影はいつも深夜に行われていたが、その大穴越しに見える空は、まるで夕暮れのように赤く染まっている。

 

その赤い空は、大地の炎の色が反射したものだった。そう、東京が燃えているのだ。その上、見渡す限り一面が瓦礫の山となり、遠くの地平線がはっきり見えてしまう程壊滅的被害を受けている。

 

ある日突然、この国の首都を襲った規格外の暴力の嵐。それは、瞬く間に起きた出来事だった為、多くの人々は自分が死んだことにすら気づかなかったことだけが救いだった。


_____

 

 


その破壊は、世界中の人々に何の前兆を感じさせることなく、突如この東洋の島国の首都で始まった。空から降ってきた異物が、この都市を象徴する巨大な電波塔にぶつかり、それを横倒しにしたのがスタートの合図だった。

 

かつて人類が経験したことのない圧倒的な暴力は、その理由も原因も人に知らせぬまま、電波塔を中心とした半径30キロメートルの範囲を一気に吹き飛ばした。瞬く間に大勢の命を奪い、ビルというビルを倒壊させた圧倒的な破壊は、この国の中枢を麻痺させ、人々は、ただ逃げ惑うしかなかった。

 

この殺戮と破壊の意味を知る唯一の存在は、今、宙高く浮かび下界を見下ろしていた。その破壊の張本人は、やれ戦争だ、いや隕石だと混乱する生き残った人々《虫けら》のことなど最初から気にもとめていない。それは、破壊する事自体が目的であり、破壊をただ楽しんでいる為であった。

 

地球人とは全く違った価値観を持つこの生物は、宇宙からこの辺境の惑星《ほし》を滅ぼす為にやってきた宇宙人だった。これまであらゆる惑星を、気の向くままに蹂躙し、支配し、植民地を必要とする宇宙人に売り飛ばしてきた彼にとっては、こんな辺境の惑星である地球に来ること自体がお遊びのようなもので、そこに住む地球人《下等生物》のことになると眼中に入れることすら難しいことなのだ。

 

見渡す限りが焦土と化すようなこの破壊も、宇宙最強の帝王を自称する力を持った彼には、ほんの腹ごなしの為の運動のようなものに過ぎなかった。羽根も無いのに空を飛びまわると、ぎりぎり倒壊を免れた高層ビルを、自身の蹴りだけであっけなく破壊していく。一通り散歩に飽きた後は、手のひらを地上に向け、それを呆然と見上げる生き残った人々に向けて光のエネルギーを放った。

 

ゼロから生み出された強大な光のエネルギー波は、哀れな地球人達はもちろん、そこにあったあらゆる構造物やコンクリートを根こそぎなぎ倒していく。辺りに立ちのぼった粉塵が収まった後に現れたのは、すりばち状にえぐれたむき出しの大地だけであった。

 

そんな圧倒的かつ徹底的な破壊の中で、彼は一つの建物が残っているのに気づいた。近寄ってみると、まるで自分の乗ってきた宇宙船にも似た円盤が乗ったそのビルは、周囲の圧倒的な破壊からそこだけが取り残されたように、不自然なまでに無傷であった。

 

彼が不思議そうにそれを眺めていると、そのビルの屋上に背広姿をした地球人が一人立っているのに気づいた。なんと、まだ人間が生きていたか、と初めて地球人に興味を向けた彼は、その生き残りの地球人に、運の良い虫けらめと、一発のエネルギー弾を放つ。するとその直後、彼にとって予想もしていなかった驚くべきことが起きた。

 

彼の放ったエネルギー弾の破壊力は、この星の軍事力と比べるまでもなく圧倒的なものだった。しかし、あろうことか、目の前の地球人は素手でそれを弾き飛ばしたのだ。地球人に右手で払いのけられたエネルギー弾は、赤く染まる空へと消えていった。

 

「あなた、一体何者ですか」

 

発した言葉に、少し驚いた顔をし、その年老いた男は一言答えた。

 

「私は、ただのアナウンサーです」

 

アナウンサー、それが何を指す言葉かは分からないが、まあ当然、私の敵になるような相手では

 

ドガァアアアア!!

 

次の瞬間、圧倒的な力を誇る宇宙の帝王は、無様にも大地に身体を打ち付けていた。一瞬地球人の姿がゆらいだと思ったら、次の瞬間後頭部を強く打ち付けられる衝撃と共に、大地が目の前に近づいてくるのだ。それが攻撃を受けて自身が落下しているのだと気づく頃には、既に身体中に激しい痛みが走っていた。

 

「き、貴様・・一体」

 

「言ったでしょうアナウンサーだと」

 

謎の地球人は、そう言って

 

「おっと言い忘れていました、地球最強のね」

 

と付け足すと、空中に浮かび上がったまま、地球の平和を脅かす侵略者を見下ろし、微笑んだ。

 

シュワシュワシュワシュワシュワシュワ・・・

 

その地球人は、全身金色のエネルギー体に包まれ、自身の生み出す風圧で背広がぱたぱたと風になびいている。どうやらアナウンサーとは、ただの地球人の名称ではなさそうだった。

 

「オーホッホ、私としたことが虫けら相手にずいぶんと油断していたようですね」

 

そう言いながら、彼は装着していた耳あてのような機械のボタンを押す。ピピピと機械が動き、相手の分析を始めた。

 

「あなた、アナウンサーさんとおっしゃいましたね、仕方無い、宇宙最強の私が相手になってさしあげましょう」

 

この耳当てには、片目を覆うような形のディスプレイがついており、そこに相手の戦闘力が数値として表示される仕組みになっていた。この地球人の戦闘力の数値は、5から100、100から1,000へと上がっていく。

 

(ほう、地球人の平均を大きく超えた戦闘力を持っているようですね。それならさっきの攻撃も納得がいく・・・何っ!?)

 

そのまま桁が6桁を越え7桁を表示した直後、ボンッという派手な音と共に、その計測器は壊れた。100万まで計る事ができるはずの計測器だったが、一体どうしたことだろうか。

 

「クッ・・・故障ですか」

 

役に立たなくなった計測器を地面に叩きつけ踏みつぶす。

 

「まあいいでしょう、すぐに八つ裂きにしてさしあげますよ」

 

キエエエエイ!宇宙人は、甲高い叫びをあげながら背広を着た地球人の元へ跳躍し、まず太い尻尾をその胴体に叩きつけた。そのまま無様に吹っ飛んだ先へ移動し、地面に叩きつけ、そしてエネルギー弾を

 

「ば、馬鹿な・・・」

 

そこには、防御の姿勢もとらず、最初の尻尾の攻撃を受けても微動だにしない地球人の姿があった。叩きつけた尻尾は、そのままむんずと掴まれている。そして、そのままぐるぐると砲丸投げのような回転と共に放り投げられ、なすすべもなく瓦礫と化したビルに叩きつけられた。

 

「ガハァッ!」

 

口から紫色の血を吐き出す。馬鹿な、この宇宙最強の帝王の私が、叶わない相手などあっていいはずがない。しかもそれがこんな辺境の惑星の、チンケな原住民共の中にいるなど、許されるべきではない。今すぐに叩きつぶさねば、帝王の誇りに傷がついてしまう。

 

「き、貴様ァ・・・!!」

 

ビリビリと、宇宙人の周囲にエネルギーが集まり、電気が走る。まさかこの惑星で本気を出すとは、彼自身思いもしなかっただろう。目にも止まらぬ速さで地球人に向かって拳を叩きつける。さすがに今度は動かざるを得なかったのか、その地球人もそれに合わせて右の拳を突き出した。拳と拳がぶつかりあうすさまじい衝撃波が辺りの空気を揺らした。

 

徐々に押されている。宇宙人がそれに気づいたのは、それからしばらく経ってからだ。お互いに決定打となるダメージを与えられないまま、ただ時間だけが過ぎていった。そんな中、ふと地球人が見せた一瞬のスキを突いて、地球人を上から力任せに地面叩き付けることに成功した。

 

奴が地面から立ち上がる前に、両手から連続エネルギー弾の嵐を浴びせかける。キェキェキェキェ!!このエネルギー弾の一発一発が、ビルをなぎ倒し、地面に大穴を開ける程の破壊力を持っている。これを何十発と叩きつけたのだ、これで間違いなく殺ったに違いない。しかし、土埃の向こうから現れたのは、エネルギー弾の隙間を抜けてきた地球人の余裕に充ちた表情だった。しまった、あのスキは故意に作られたものか、そう思う前にボディに強烈なタックルが入っていた。ゴハァ!まずい、このままでは負けてしまう。プライドにこだわっている場合ではなさそうだ。

 

「ククク、仕方ありませんね、奥の手を使いましょう」

 

そう言って、あくまで余裕を装いながら距離を取る。

 

「ほう、まだそんなものを隠していたんですか」

 

ムカつく程に穏やかな口調で地球人が言う。まるで本当に感心しているような様子が、いちいちこちらの神経を逆撫でしてくる。
ふん、まあいい。今見せてやろう、真の姿を・・・


___


ハァァァアアアアア!!

 

その生き物が拳を握り叫ぶと、一気に辺りの気がビシッと張り詰めた。まるでそれに合わせるかのように空も暗くなり、黒い雲に辺りは覆われ、ぽつぽつと雨も降り始める。すさまじい気が辺りに巻き起こり、風圧に飛ばされそうになった。そして、生物の気が爆発的に強くなったかと思うと、さっきまでとは全く別の姿をした生き物がそこに立っていた。

 

頭から生えていた2本の角は消え、全身が、白と紫だけのシンプルな色に変わっている。さっきとは比べものにならない程禍々しいその気は、見た目の変化だけでなく、この生物がさっきまでとはまるで別物の力を手にしたことを知らせていた。こんな短時間で変体を遂げ、草壁に匹敵する強さを持つ時点で薄々感づいてはいたが、恐らくこれは地球の生き物ではないのだろう。宇宙は、まだまだ草壁ひろしの発見していないふしぎで溢れているのだ。

 

「さぁ、ショータイムです」

 

そう宇宙人に言われると同時に、突然目に映る景色がぐるんぐるんと回転した。攻撃の軌道が全く見えない、それ程に速い一撃だった。一直線に吹っ飛ばされながら、草壁ひろしは思う。負けるかもしれない、と。

 

飛ばされた先は、無傷だったテレビ局のビルだった。壁に大穴を開けて、局内にゴロゴロと転がり込んだ草壁。あまりのダメージに全身を包んでいた気が解かれ、頭を怪我したのか流れた血で視界が赤く染まっている。そこは、皮肉にもさっきまで収録中だった自身の番組のスタジオだった。

 

草壁さん、大丈夫ですかっ!?一体何が、う、うわあああああ!」

 

収録中、慌てて外へ出て行ったかと思えば、今度は壁に大穴を開けて戻ってきた司会者に、番組の出演者であり、パネラーの野々崎が駆け寄った。しかし、その後から入ってきた異様な姿の生物を見て、驚きのあまりへたりこんでしまった。いつもは場の空気を読み、気の利いたジョークで番組を沸かせる野々崎も、宇宙最強の帝王を前にしては、ただうろたえるだけであった。

 

「オーホッホッホ!初めてですよ、私がこの姿を他人にお見せするのは」

 

勝利を確信したのか、高笑いをする宇宙人に、草壁は精一杯の軽口を叩いてみる。しかし、その表情に余裕はなかった。まさかこの宇宙人がこれほどの力を隠しているとは思いもしなかった。もしも私が負けた後、人類に勝ち目はあるというのだろうか。

 

「どうやらこちらの地球人は、あなたのような力は持っていないようですね」

 

ゴシュ、ゴシュという独特な足音をさせ宇宙人が、野々崎の方へ近寄る。

 

「あなたっ、私以外の人間に手を出すのはやめなさいっ!」

 

そう言って、宇宙人に駆け寄った草壁は、尻尾で軽くはたかれパネラー席にまで飛ばされた。

 

草壁さん!あなた大丈夫ですの!」

 

パネラー席の陰に隠れていた、同じく出演者の黒林が消え入りそうな声を出す。

 

「おやおや、まだ人間が隠れていましたか、順番に殺してさしあげますから、そこで大人しく待っておいでなさい」

 

「ほんまにー君は何やね、外国人選手かなにかかー?」

 

そこに事態の深刻さを分かっていないのか、トイレから戻ってきた出演者の板西が宇宙人に気安く話しかけた。

 

「順番にと言ったでしょう!キエエエイ!」

 

「ゆでたまぶっ!!」

 

宇宙人が指から発射した光線に貫かれ、板西は事切れた。

 

「板西さん・・・」

 

草壁は、悲しそうな目で板西の亡骸を眺める。

 

「オーッホッホ、殺す順番が変わってしまいましたね」

 

いやらしい程に丁寧な言葉遣いの宇宙人は、地面にへたり込んだままの野々崎の首を掴んだ。それを見て、やめろと絶叫する草壁。しかし、その必死の声も虚しく、宇宙人は野々崎を、そのまま壁に開いた大穴から天高く放り投げた。

 

「野々崎くんっ!!!!」

 

「うわあああああ草壁さああああん!!」

 

デデーン(効果音)

宇宙人が空へ舞い上がる野々崎に片手を向け、指をクイッと上に曲げる動作をする。それと同時に、野々崎は内側から膨らみ、空中で木っ端みじんにはじけ飛んだ。

 

「オーッホッホホ!見てごらんなさい、まるで花火のようですよ!」

 

ドクン・・・

目の前で古き友が、まるで虫けらのように殺された。突然現れた宇宙人に、何の意味も無く。

 

「おやおや、あまりのショックに声も出ないようですねぇ、でも安心してください」

 

ドクン・・・

 

草壁は生まれて初めて真の怒りというものがふつふつと自身の身の内に沸き上がってくるのを感じていた。しかし、そんな激しい怒りの中で、何故かそれを冷静に俯瞰しているもう一人の自分も同時にいた。静と動、二人のひろしが見つめ合っている。

 

「すぐに、あなたも木っ端微塵にしてさしあげますよ、あの地球人のように」

 

ドクン・・・

 

「あの地球人ですって・・・?」

 

「失礼ですが、それは野々崎くんのことですか・・・?」

 

今なら勝てる、いや勝たなければならない。強い思いと共に、草壁は立ち上がる。何故か、これまでにない気の充実を感じる。大気中の気という気が、草壁に集まってきているかのようだった。野々崎を殺したこの宇宙人を、私は許さない、絶対に、許してはならない!!

 

「野々崎くんのことですかぁぁぁああああああ!!」

 

すさまじい風圧が草壁を中心に生まれ、遠巻きに様子を見ていたスタッフが、スタジオの壁に叩きつけられその一部となった。白髪染めによって黒く染まっていた草壁の頭髪が、みるみる根元から金色に変わっていく。そして、虚無空間から現れた赤いヘルメットと赤いマントを草壁は力強く手に取ると、それを自身に纏った。ヘルメットとマントに包まれ、神々しい黄金の気に包まれた草壁は、全くの別人のようだった。

 


___

 


「ふん、金色になったからどうだって言うんです」

 

そうは言ってはみたものの、目の前の地球人の雰囲気は、さっきまでとは明らかに変わっている。完全体と化した自分の相手になるとは思えないが、油断はしないほうがいいだろう。

 

「残念ですが、この力の制御が上手くできそうにないので、一瞬で殺してしまうかもしれません」

 

宇宙人がやれるものなら、と言い終わる前に地球人が動く。ドスンという衝撃がみぞおちにしたかと思うと、遅れて激痛が襲ってくる。気づけば、ビルから遠く離れた空に向かって身体が打ち上げられていた。反撃しようと相手の姿を探すが、今度はズドンと首元に衝撃が走る。受け身も取れないまま、渾身の力を込めて地面に叩きつけられてしまった。仰向きになって見上げると、こっちに向かってすさまじい光が向かってくる。速い、追いつかない。

 

「くたばりなさいっ!」

 

すさまじい力が身体の内から沸いてくる。まさかこの歳であれ以上の高みへ、自分の限界を越えることができるとは思いもしなかった。ある種の感謝と共に、ありったけの力をこの宇宙人にぶつける、ぶつける、ぶつけ続ける。決して一瞬たりとも休ませはしない。これは惨めに死んだ野々崎くんの分、顔面にエルボーを入れる。これは死んだスタッフの分、尻尾を掴み、地面に何度も叩きつける。

 

「そしてこれが、死んだ視聴者達の分ですッッッ!!」

 

両手から連続して気の塊を放つ、地面からやっと立ち上がろうとする宇宙人にぶつかったそれは、派手な音と共に爆発した。土埃が舞い、宇宙人の影が見えると、そこには満身創痍ながら、こちらをにらみつける鋭い眼光があった。

 

「ちくしょう・・・ちくしょう・・・ちくしょおおおおおおおおお!」

 

心底悔しそうに叫ぶと、その宇宙人の細身の筋肉は、瞬く間に数倍に膨張し、筋肉にビキビキと太い血管が走った。感じたことのないすさまじい気が辺りに充満している。宇宙人の中で限界にまで高められた気が、今にも外に溢れ出てきそうだった。おそらく、これは限界を超えた力なのだろう。それほど強力ではあるが、同時に不安定な力だった。しかし、それは限界を超えた力をふるう草壁にとっても同じこと。今まさに、二人の決着の瞬間が近づいていた。

 

限界と限界、究極の力と力が二人の肉体を通してぶつかる度、辺りには轟音と共にすさまじい衝撃波が広がる。お互いに一歩も譲らない、少しでも譲った方が敗北するぎりぎりの戦いだった。一撃一撃に大地が揺れ、雷が二人の周りに落ちていく。それは、まるで永遠とも一瞬とも取れる不思議な時間《とき》だった。もはやどちらが勝つのかは神にも分からない。結末は、ただ二人の肉体のみが知る、究極の戦いが続く。

 

「ハァ、ハァ・・・ククク・・・」

 

そんな極限状態の中、突然攻撃を止めた宇宙人が、邪悪な笑みを浮かべ空高く飛び上がった。草壁は、一瞬怪訝な表情を浮かべた後、その意図を察したのか宇宙人に向かって叫ぶ。

 

「あなたっ、外道にも程がありますよっ!!」

 

「うるさい!貴様のような目障りな地球人は、俺に殺されるべきなんだーーっ!!」

 

いつまでも決着のがつかないことに焦りを感じたのか、その宇宙人のとった手段は、この惑星ごと地球人を葬りさるというものだった。この惑星を手に入れられないのは残念だが、自分を圧倒するような力を持つ、こんな危険な存在を許しておく訳にはいかない。自分の持てる全ての力を込めて、文字通り最後にして最大の一撃を奴にぶつけ、この地球もろとも破壊してやるのだ。

 

「くらぇぇぇええええええ!!」

 

両手を上にかざし、瞬時に巨大なエネルギーの球体を作り上げ、地球に向かって投げつける。宇宙人の全エネルギーをつぎ込んだそれは、地上の草壁から見て、全体が見えない程に大きなものだった。

 

「そうはさせませんよっ!はぁぁああああああ!!!」

 

草壁も、負けじと全身全霊の気を両手に集中させる。黄金の光が、草壁の周りでバチバチとぶつかり合い、足元はヒビ割れ、辺りの瓦礫や岩が重力に逆らうように宙へと舞い上がる。

 

ボッシュゥゥゥウウウウト!!!!!」

 

愛するこの地球を、不思議で溢れるこの緑の大地を守る為、草壁が両手をちょうどドラゴンボールでいう所のかめはめ波みたいな形にして放った気の塊は、宇宙人の放った巨大なエネルギー球の中心にぶつかり、そのまま渦となり、そのエネルギーを吸い取るようにどんどんと膨張していく。

 

「馬鹿な、馬鹿な、ありえない、こんなこと、ありえちゃいけないんだあああああああ」

 

テレッテレッテぽゎゎゎゎ~~~ん(ボッシュート音)

 

「ちくしょぉぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

宇宙人の必死の叫びも虚しく、ついにエネルギー球をかき消した気の塊は、醜く膨張した筋肉の宇宙人を、その存在ごと消し去り、暗雲を貫くと、宇宙に向かって巨大な光の柱を立ちあげた。

 

全ての力を使い果たし、膝から崩れ落ちた草壁。髪の色は元に戻り、ヘルメットは割れ、赤いマントもボロボロと崩れ落ち霧散する。空を見上げたその光無き瞳には、雲ひとつ無い晴天が映り込み、その顔には、いつもの穏やかな笑顔が浮かんでいた。

 

 

おわり


ED曲「エンジェーエンジェーエンジェーー(アーアー」


ティラララ ティララララン↑ ダッダー テッテーテテッテッテーテテテー

 

「こんにちは!草壁ひろしです!肉体は死んでも精神は次のステージに行くんですね、あの世ふしぎ発見です。」


「ひろしさん、いい加減にしてちょうだい。野々崎も番西さん達も、みんな再生医療の力で生き返って、司会者の事待ってるんですよ」


次回、世界ふ○ぎ超発見!


『生きていた草壁ひろし Zパネラーも全員復活だ!!』

小説を書くことにハマッた話

最近更新のないのは、別にブログのことを忘れていた訳じゃなく、僕は最近物書きの内でも脳の恥ずかしい所をさらけ出し、ピーヒャラピーヒャラ腹踊りもとい精神的ストリップを行う小説書きを始めたからだ。

 

ひょんなことから、軽い気持ちで始めたのだけれど、これが面白くて仕方が無い。なんていうかテキストサイトの頃よりも、ブログを書いてる時よりも、書いてて脳がスカッとする気持ちよさがあるのだ。多分小説には、僕というしょうもない枠が存在しないから、無限に話が脱線しても良いし、どれだけ滅茶苦茶なことを言っても作り話だからね、で済まされる究極の自由さがあるからなのだと思う。

 

今見返してみると、僕の芸風も日記っていうより半分妄想世界の垂れ流しを日記風にまとめたみたいなもんだったから、実はこっちの方が向いていたのかもしれないと思う日々だ。ちょっと日常を盛って話す時の後ろめたさもないしね!

 

せっかくだから、ここで小説の方のリンクも貼っておきますから、読んでくれる奇特な方がいたら、いてほしい、いてくれるんじゃないかな?読め、いいから読んで!っていうことでよろしくお願いいたします。

 

 

 限界集落・オブ・ザ・デッド

kakuyomu.jp

まず、僕の大好きなゾンビのお話、これが一作目ね。鍬を片手にへーこらジジイが戦う話のつもりが、なんか大げさなことになってきてます。読んで。

 

 

スーパーひ〇しくんVS完全体フ〇ーザ

kakuyomu.jp

次、世界ふ〇ぎ発見。戦闘描写を練習したくて書いた。何か消される可能性高いとか言われてるけどオリジナルだからこれェ!

追記:5/9  今日カクヨム運営に消されました、反省してるよっ☆

 

 

スクールエスケーパーエリカ

trte.jp

最後これ、ガールズでラブな恋愛のお話。恥ずかしいからこれは読まなくていい。

 

いじょ!ブログで行き詰ってる人とかも小説書こう!どんどん脳みそをパージしていこうぜ!

 

 

 

時空を超えた交通整理おじさんの話

 先日、近江町市場前の横断歩道を渡っていたら、交通整理の誘導棒片手に笛を吹いてる人がいた。休日なのに警察も大変だなと何気なく目をやると、それは口から泡を吹き吹き笛も吹いてる野生の交通整理おじさんだった。ああ、春も近いのだろうか。寒風の吹く二月の空の下で出会った、思わぬ春の息吹に、自然と僕は早足になった。

 

 鳴り響く笛の音と大きく降られる右手の誘導棒を横目に通り過ぎようとしたとき、ふと交通整理おじさんが首から何かをぶら下げているのに気づいた。はて今のは何だろうかと足を止め、目をこらして見てみると、陽に反射してキラキラと輝く黄金の輝き、それは紛れもなく金メダルだった。そう、彼は春と共にやってくる街の妖精ではなく、なんと金メダリストだったのである。

 

 街の妖精交通整理おじさん改め元アスリートの金メダリストおじさんは、胸に金メダルを下げて必死に腕を振っている。えっと、交通整理がオリンピック競技に採用されたのはいつのことだったっけ?足りない頭で考えてみるも答えは出てこなかった。自分のあまりの無知さに腹が立つ。帰ったらすぐインターネットで調べようと思いつつ、通行人に聞き取れない大声で何かを叫んでいるおじさんをうしろに帰路についた。

 

 帰宅後、インターネットの知恵者達が集まることで有名なyahoo知恵袋をくまなく探してみたものの、交通整理と金メダルを結びつける手がかりはどこにも見当たらなかった。馬鹿な、宇宙・生命・この世の万物の理を知る聡明なチエリアンの方々にも全く知られていないということは・・・・ゴクリ。ある一つの結論に行き着いた僕は、思わず生唾を飲み込んだ。考えられる可能性はただ一つ。交通整理が今現在、メダル競技として扱われていないということは、今より未来の世界ないしは異なる宇宙を基にする異世界で競技としての地位を確立している、ということではなかろうか。つまり彼は、少なくともこの世界の人間ではないことが推測されるのである。

 

 金メダルおじさんはこの世界の住人でない、その衝撃の真実を前にして、「そう考えると辻褄が合うな」と僕は独りごちた。今思えば、彼の聞き取れない叫びも、遙か未来の日本語であったと考えれば納得出来る。仮に現代人が平安時代にタイムスリップすることを想像してみてほしい。同じ国とはいえ、発音も単語も数百年の時を経れば別物だろう。同じように未来の日本語が、少なくとも現代人が聞き取れない程度に変質していておかしくはない。更に異世界人であれば、言わずもがな言語のルーツが違うだろうから我々に通じるはずがないのである。

 

 タイムトラベラー、異世界人、僕は子供の頃からそういったオカルトの類が大好きだった。いつかそういった不思議な存在に会ってみたいと常々思っていたのだが、それがなんと昼間の横断歩道で知らぬ間に叶っていたのだ。全くもってうかつだった。足早に現場を去ってしまったことに後悔しつつ、憧れの存在にもう一度会いたいと思った僕は、今日も同じ横断歩道を渡りに行ったのだけれど、そこには誘導棒を持った金メダリストおじさんは居らず、その場に難しい顔をした警察官が一人、暇そうに立っているだけだった。

 

 交通整理おじさんは一体どこに行ってしまったのだろうか。時間や時空を越える道具で元の世界に帰ってしまったのだろうか。あるいは、僕より先にこの重大な事実に気づいた政府の組織に捕まって、国会議事堂下にある秘密地下施設内で監禁拷問を受けているのかもしれない。だとしたらこの場に立つ警察官の説明もつくだろう。ただ少なくとも、僕にはもはや出来ることが何もないことに絶望した。

 

 あの一見、ただのチープな玩具のようにも見える黄金のメダルの輝きと、この世のものならざる叫び、悲鳴を上げて走っていった若いOLの後ろ姿が忘れられない。僕はふと、日常に戻った横断歩道の途中で空を見上げた。今日も曇天の空から、ひらひらと雪が舞い落ちている。春はまだ遠い。

 

 

物事を知らなさすぎて、野球のことが全然分からない話

僕は本当に世の中の物事を知らない。

 

 高校生の頃、周りがKAT-TUNの話をしていても僕は、男性アイドルユニットだとは知らずに、皆がカートゥーンアニメのことを話していると思っていたし、赤ちゃんはコウノトリ博士が孤島の秘密研究所で人工培養したものを、夜な夜な子供を欲しがっている夫婦の家に配布していると信じていたくらいだ。

 

 ちなみにコウノトリ博士というのは、生物学の権威 河野 潤一郎博士が生み出した人工生命体である。マッドサイエンティストであった河野博士は、周囲の反対を押し切り、自身の所有する孤島で日夜、人工生命を生み出す危険な実験を繰り返していた。そんなある日、実験中の事故によって河野博士は死亡する。しかし、その事故をおこした実験によって幸か不幸か自我を獲得した生命が誕生し、やがて人間の10倍のスピードで急成長した人工生命体は、自身を河野博士の実の息子であると勘違いしたのである。ある日、亡き父が残した実験ノートに綴られた、研究を認めようとしない人間社会への恨みと、自ら生命を創り出すことへの強い執着を知った人工生命体は、自らをコウノトリ博士と名乗り、亡き父河野博士の意志を受け継ぐ研究を始めた。やがて、世界がその存在に気付く頃には、強大な科学力と無限の生命を持った兵士を核とした巨大軍事国家が太平洋上に浮かび上がっていたのだった。これが、後の人類にとっての最終戦争のプロローグである。

 

 さて、物事を知らない人にありがちなことなんだけれど、本人は別に知らないことを恥じてる訳ではない。たまに人に笑われたりするけれど、その為に興味もないことを頭に入れるのも面倒くさいし、そもそも興味がないから知らないのだからどうでもいいじゃん、くらいに思っている。自分が好きでもないものを無理やり脳みそに入れるのは、思春期の頃に必死に覚えた流行曲くらいでいいだろう。ミスチルケツメイシとか、当時必死こいて聞いてたけど今でも全然好きじゃない。今でも全然好きじゃない。

 

 そんな僕が、子供の頃から何度も遭遇しては敗北を喫しているのが、野球についての話題だ。僕の周りに広がる男子社会では、野球の話題はどこでも使える基軸通貨ドルみたいなもんらしく、野球選手の名前や、こないだの試合がどーだとかこーだとかを皆で延々と話している場面に何度も何度も遭遇する。その度に、僕は空中を見つめて苦笑いしてやり過ごすばかりだ。あるいはデジモンの話題に付いていけなかった小学校時代を思い出して、うっすら涙を浮かべているかもしれない。

 

 僕は昔から野球に興味がもてなかった。未だにセリーグパリーグの違いも分からないし、マー君っていう人がどこの球団の人かも分からない。そもそも基本的なルールも、バットでボールを打ったら、3つくらいある白いところに向かって選手が走っていく、っていうことくらいしか知らない。

 

 父は巨人ファンでいつもテレビ中継を見ているし、別に野球と隔絶された家庭で育ってきた訳でもないんだけれど、なんでここまで野球のことに興味がもてないのだろうか。もしかしたら、前世がインド人で、クリケットにしか興味がなかったせいなのかもしれないけど、クリケットのことも良く知らないからその線もなさそうだ。

 

 いつか興味が持てるんじゃないかと気長に待っていたんだけど、突然野球が好きになるような気配も感じないし、きっとこれから先も、さほど野球に興味は持てず、ルールも曖昧なまま人生を終えていくんだろう。今後も野球の話題が出るたびに、口をとがらせて、何かを考えているフリをしながら曖昧に会話を流し続ける自身の後姿を想像すると、何となくさみしさを感じるのである。はぁー起きたら野球という概念がこの世から消えてねぇかな。

 

 

トイレでスマホがスカラベになった話

 先に断っておくと、またトイレの話だ。今日、会社のトイレでズボンを下ろした僕は、洋式トイレに座りながらスマホを少しさわっていた。簡単なメールチェックをして用をたした後、おしりを拭く為に僕は一旦スマホをどこかにしまおうとした。しかし、あいにくポケットにいれるにもズボンは既に下ろされており、その収納は困難と思われた。ふと辺りを見回すも、置き場所になりそうな棚や台もない。万事休す、このままではおしりを拭けないではないか。

 

 しかし僕は、こんなことで焦りはしない。あくまでスマートに、下ろしたパンツの上にスマホをそっと置いて、ウォシュレットは使わずエレガントに拭いた。この技は、安定した置き場所がない場合のみ使用を解除されるいわゆる奥義であり、パンツの上に置くことは、スマホにとって決して最善ではないが、スマホをそのまま地面に置いたり、片手で持ったまま不安定にことを進めるよりは、落下や汚染のリスクを最も抑えることのできる技である、と今は亡き師匠に教わっていた。

 

 奥義を使い、スマートに全てを終えた僕はスマートにズボンを上げた。すると、肝心のスマホを取り忘れており、パンツの上のスマホはツツーッっとズボンを下り、靴下の間に挟まってしまった。「しまった!」と冷や汗が流れる。ここまでスマートに事を済ませてきたのに、なんたる凡ミス。ここからもう一度ズボンを下ろし、スマホをズボンから取り出す様は全くスマートではない。それは僕の美意識に反する。

 

 何とかして、この失敗を取り戻さなければならない。そう思った僕は、あくまでエレガントに、ズボンと靴下の下で膨らむシルエットを頼りに、スマホを布越しに捕らえた。パンツからズボンを伝って落下したスマホが靴下の裾に挟まっているのであれば、一度スマホを上にずらしてやれば、靴下の呪縛から逃れたスマホが、ズボンの裾からスマートにポンッ!と飛び出てくるという寸法である。イッツパーフェクトプラン。

 

 捕らえた輪郭をゆっくりと指でなぞると、4.7インチのファーウェイp8liteの輪郭が確かにそこにあった。僕はニヤリと微笑むと、一気にそれを上にずらしてやった。するとツツーッっとスマホの感触が靴下から離れたのが分かった。成功だ、後はズボンの裾に手を置いて、落下してくるスマホをお迎えするのみとなった。僕は布越しに勝利を確信し、手を離した。

 

 しかし、あろうことかスマホの感触は手を離したふとももの辺りで止まったままなのである。おかしい、何かが狂っている。想定外の状況への焦りから、ブワッと尋常でない量の汗が出た。なんとか冷静に状況を判断しようとする。地面に対して真っ直ぐ立っている以上、ふとももでスマホが止まるということは本来あり得ないはずだ。すると、重力に逆らう何かの要因があるとしか考えられない。一体それは何だ!?

 

 そこでふと、記憶が今朝の出勤前にさかのぼった。今朝はとても冷え込んでいて、寒さで目が覚めたほどだった。そこで僕は、震えながら先日ユニクロで購入した、ヒートテックタイツを履いてからスーツに着替えたのだった。

 

 ヒートテック!そう、ズボンと靴下の間には、ヒートテックタイツが存在していた。そのなめらかな肌触りは、僕に装着を忘れさせる程で、事実僕はズボンを下ろした際確かに一緒に下ろしたであろうタイツの存在を認識することすら出来なかったのである。恐るべきユニクロの科学力。原因は分かったが、状況は既に詰んでいる。もはやタイツの下にあるスマホを取り出すには、ズボンを脱ぐしかないのだ。

 

 僕は泣いた、己の無力さと不格好さに声を殺して泣いた。ズボンを脱ぎ、タイツの布ごしにくっきりと形が表れているスマホのシルエットに、僕はハムナプトラに出てくる、皮膚の下を移動するスカラベを思い出していた。